3. SE/30起動不安定性、起動時間に関する考察
SE/30においてメモリや拡張カードを増設した場合に、電源オン後に長時間シマシマの画面が続いたり、起動音が鳴らずにアルペジオと伴にサッドマックが現われたりすることがあります。
3-1
3-2
感覚的には、メモリや拡張カードの増設によるCPU側の負荷増大に対して、電源ユニット側からの供給電圧が十分でないとこのようなことが起こると捉えています。
特に初期の1989年に作製されたCPUソケット式のロジックボードは、古いだけに劣化による内部損失なども大きく不安定要素が多いようです。
今回SE/30-Aのロジックボードもこのタイプに交換したこともあり、もう一度このあたりのことを経緯も含めて整理してみることにしました。
[確認1] 供給電圧の影響について
電源ユニット側に関しては 「SE/30電源ユニット 総チェック」を行ない、3台すべてのSE/30において負荷時の供給電圧が4.6V以上確保されるように改善を図っています。
以下に、結果のグラフのみを再掲載しておきます。
尚、この時のSE/30-AのロジックボードはまだオリジナルのCPU直付けのタイプです。
3-3: 電源ユニット改修前
3-4: 電源ユニット改修後
電源ユニットの改修(Flex ATX電源への換装)を行なったSE/30-AとSE/30-Cに関して起動安定性の改善がみられました。
具体的は、1回目の電源オンでは起動音がしない、電源オンから起動音までに間がある、電源オン後すぐにアルペジオが鳴る、といったことがほぼなくなりました。
[確認2] メモリの影響について
次にCPU側ですが、拡張カードは装着せずにまずメモリの影響だけを調べることにしました。
実は、SE/30-BとSE/30-Cのロジックボードに関してはかなり前に確認を行なっています。
条件は以下のように設定しました。
起動OS: 漢字Talk 7.5.5
ROM: SE/30 ROM SIMM(オリジナル)
メモリ: 8MB(1MBx8)〜128MB(16MBx8)
その他: MODE32により32ビットアドレスを有効にした後で起動確認
3-5: 1MB
3-6: 4MB 低全高(省電力)タイプ
3-7: 16MB MemoryMasters製
3-8: 16MB OWC製
確認に使用したメモリは上記の4組で、いずれも8枚のセットです。
16MBに関してはMemoryMasters製とOWC製の2種類を確認しました。
3-9: グレー画面
3-10: カーソル表示
3-11: Happy Mac
3-12: Welcome画面
3-13: MacOS画面
3-14: アイコンパレード開始
3-15: アイコンパレード終了
3-16: OS起動終了
漢字Talk 7.5.5の場合、正常であれば表示画面は上記のように推移します。
電源オンから主要なイベントまでの経過時間を測定して結果をまとめました。
3-17: ロジックボードCに対する確認結果
まず、SE/30-CでロジックボードCに対する確認を行ないました。
これにより以下のことが分かりました。
・メモリの増設だけでは起動後のシマシマ画面は発生しない
・メモリ増設の影響を受けるのは主にHappy Mac〜Welcome画面の経過時間
その経過時間はほぼメモリサイズに比例する
・OWC製16MBメモリ(16*)は128MBで使用すると103秒でアルペジオが鳴り異常終了
3-18: ロジックボードBに対する確認結果
次に、SE/30-CのロジックボードCをロジックボードBに組み替えて確認を行ないました。
結果はロジックボードCの場合とほぼ同じ傾向になりました。
・メモリの増設だけでは起動後のシマシマ画面は発生しない
・メモリ増設の影響を受けるのは主にHappy Mac〜Welcome画面の経過時間
その経過時間はほぼメモリサイズに比例する
・OWC製16MBメモリ(16*)は128MBで使用すると65秒でアルペジオが鳴り異常終了
以上2つのロジックボードに対する確認結果より、OWC製の16MBメモリはMemoryMasters製のものに比べて負荷(消費電力)が大きいと考え、使用しないことにしました。
また、このメモリは全高が高いため8枚挿しにするとBankBの最外側にあるメモリがSE/30のフレームと干渉してソケットのツメを折る可能性があり、それも不採用とした理由です。
MemoryMasters製16MBに関しても最大の128MB(8枚挿し)での使用は避けることにして、それ以降は各号機のメモリ設定を以下のように変更しています。
SE/30-A: 68MB (16MBx4+1MBx4)
SE/30-B: 68MB (16MBx4+1MBx4)
SE/30-C: 32MB (4MBx8)
3-19: ロジックボードAに対する確認結果
今回CPUソケット式のものに変更したロジックボードAについて追加で確認を行ないました。
SE/30-Aで漢字Talk 7.5.5を起動した場合の結果となります。
今回はメモリの設定は3水準のみ確認しました。
以上3つのロジックボードに対する確認により、メモリの増設だけではシマシマ画面の発生はなくHappy Mac〜Welcome画面の経過時間に影響を与えるだけということが分かりました。
また、それらの傾向が非常に高い再現性を示していることから、どのロジックボードにも極端な劣化などはないと考えられ、少し安心できました。
取り敢えず、メモリとしては最大128MB(16MBの8枚挿し)は避けるというのが結論です。
[確認3] 拡張カードの影響
起動OS、ROM、メモリ、拡張カードを本来の設定にして、各号機の起動状況を確認しました。
3台の設定条件は異なりますが、3台ともにシマシマ画面が発生します。
以下、各号機の設定内容と主要イベントにおける表示画面を示した後、確認結果についての分析を行なっていきます。
SE/30-A
起動OS: 漢字Talk 7.1
ROM: SE/30 ROM SIMM
メモリ: 68MB(16MBx4+1MBx4)
拡張カード1: Daystar Turbo 040 40MHz
拡張カード2: Interware Vimage
3-20: シマシマ画面 (変則格子)
3-21: アイコンパレード開始
3-22: アイコンパレード終了
3-23: OS起動終了
SE/30-B
起動OS: Mac OS 8.1
ROM: IIsi ROM SIMM
メモリ: 68MB(16MBx4+1MBx4)
拡張カード1: DiiMO 030 50MHz for SE30
拡張カード2: Micron Xceed Color 30HR 及び Grayscale Adapter
3-24: シマシマ画面(縦縞)
3-25: Happy Mac
3-26: アイコンパレード終了
3-27: OS起動終了
SE/30-C
起動OS: 漢字Talk 7.5.5
ROM: IIfx ROM SIMM
メモリ: 32MB(4MBx8)
拡張カード1: Daystar PowerCache 33MHz for SE/30
拡張カード2: Asante MacCon3 for IIsi
3-28: シマシマ画面(縦縞)
3-29: Happy Mac
3-30: アイコンパレード終了
3-31: OS起動終了
以下、今回新たに確認を行なったSE/30-Aを中心に結果の分析を行ないました。
メモリの影響
拡張カードを装着する前に、SE/30-Aで漢字Talk 7.1による起動確認を行ないました。
3-32
その結果を前出の漢字Talk 7.5.5に対する結果3ケースと重ねてみました。
尚、漢字Talk 7.1ではMacOS画面は表示されないので破線になっています。
グラフの形式は前と少し異なりますが、以下のことが読み取れます。
・メモリ増設の影響はHappy Mac〜Welcome画面の経過時間のみに現われる
その経過時間はメモリのサイズにほぼ比例している
その経過時間は起動OSの違いにはあまり依存しない
・Welcome画面以降の経過時間はメモリサイズには影響を受けず起動OSに依存する
拡張カードの影響
SE/30-Aに拡張カードを装着して確認を行ないました。
3-33
その結果を拡張カード装着前の結果と重ねてみました。
尚、装着後はHappy MacやWelcome画面は現われなくなったので破線表示となっています。
このグラフからは、以下のことが言えます。
・拡張カード装着によりシマシマ画面が表示されるようになる
・シマシマ画面が54秒まで続いた後、グレー画面→カーソル表示と通常のプロセスに移行する
・Welcome画面(装着後は破線推定)までの経過時間は両者でほぼ一致している
したがって、この間は拡張カードの影響をあまり受けていないと考えられる
・それに対しWelcome画面以降はカード装着により経過時間が短くなっている
各号機における影響
SE/30-B、SE/30-Cについてもそれぞれの設定で起動確認を行ないました。
3-34
それらの結果をSE/30-Aの結果と重ねてみました。
以下のことが言えそうです。
・どの号機も拡張カードの装着によりシマシマ画面が表示されるようになり、
その表示継続時間はメモリサイズに依存して長くなる傾向にある
・ここでもWelcome画面までとWelcome画面以降に分けて傾向をみると、
前半はメモリサイズのみに依存しているのに対し、
後半は逆にOSや拡張カードの違いに依存している
3-35
もう少し分かりやすくするために、拡張カードの違いも含めて表に整理してみました。
シマシマ画面の表示継続時間はメモリサイズに比例して長くなる傾向にあるようです。(赤色)
OS起動に要する時間はOSのスペックに加えてアクセラレータのスペックにも依存していて、SE/30-Aの起動時間が他に比べて短いのは、漢字Talk 7.1という軽めのOSとDaystar Turbo 040という高速のアクセラレータに因るものと考えられます。(青色)
まとめ
メモリの見直しや電源ユニットの改善を行なってきた結果、最近は起動が比較的安定していて、アルペジオやサッドマックもあまり出なくなったように思います。
シマシマ画面に関しては、拡張カードを多用する以上ある程度は致し方ないことで、1分程度待てば安定的にグレー画面に変わるのであれば、異常というよりはCPUソケット式ロジックボードとしての仕様的なものと考えたいと思います。
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